今、この記事を読んでいるあなたはきっと毎日「行きたくない」と憂鬱な気持ちで過ごしているのだと思います。
私が新卒の1年目に保育士を辞めたいと思っていた時、なかなか言い出せなかったのはこんなことが理由でした。
- 1年目で辞めるなんて無責任…
- 行きたくないのは甘え…?
- 年度途中なのにクラスはどうなる?
- 保護者にどう思われる?
- 辞めるまでの期間気まずくならない?
しかし、私は結果的に新卒1年目、3ヶ月で保育園を退職しました。そして後悔はありません。
保育士を辞めたいと思う時、その責任は本人だけにあるとは限りません。
どうか自分を責めず、この体験談を参考にしてもらえると嬉しいです。
新卒1年目「保育士辞めたい」
新卒1年目の保育士がいかに辛いかは、保育士を経験したことがある人なら誰もが知っていることです。しかし「辛い」といっても誰もが1年でギブアップするわけではなく何年も続けている人もいます。
「辞めたい」と思っているみなさんが葛藤するのが「たった1年、しかも年度途中で辞めるなんて甘えなんじゃないか」ということです。
では、ここからは実際に新卒1年目で辞めた私の体験談です。
保育士を辞めたのは
新卒年度途中の3ヶ月目
新卒として入職が決まり、入職前の1月から出来る限りアルバイトとして保育園に出勤するように言われました。いわゆる新人研修というやつです。
4月から2歳児の担任が決まっていたので、その子供たちのクラスへ保育補助として配置されました。学校の授業もほとんんどなく、週に3日~5日出勤していました。
この頃からすでに保育園の居心地は悪く「楽しい」という感情はありませんでした。行きたくないという気持ちを押し殺して働いていた感じです。
続けられるのかただただ不安な中、それを乗り越えるために必死に業務をこなしている感じでした。
時間とお金をかけて保育士資格を取った手前、保育園に就職するという選択肢しかなかったんですよね…
しかし、入職後3ヶ月が経った七夕の準備を始めた頃、頭の中は「行きたくない」でいっぱいになり退社しました。
何が辛かったのか
これは、自分でも何度も何度も考え「私は弱い」と自分を責めました。
- どうして頑張れないんだ・・・
- どうしてこんなことで辛いと感じてしまうんだ・・・
- どうして上手くできないんだ・・・
- どうして人とうまく関われないんだ・・・
学生時代の友人はみんな頑張っているのに、自分だけが頑張れない。具体的に以下のことが辛かったです。
①同期がいなかった
私が配属された園は同期が1人もいませんでした。悩みを相談しあったり仕事抜きで付き合える存在がいないのはとても孤独でした。
また「1年目の仕事」とされる雑用を1人でこなさなければならないことも大きな負担となり辛かったです。
②ペアを組んだ先生にも余裕がなかった
ペアを組んだ保育士は2年目でした。優しい人でしたが初めて自分がメインでの担任となったため、ペアの保育士自身も余裕がありませんでした。
「やり方を教える余裕」がないため、私が上手くできないことは「やっとくからいいよ!」という感じで教えてもらえませんでした。
そのため、先輩がいない時に「自分では出来ない」「やり方を知らない」ことがとても多く、園長や主任からよくお叱りを受けました。「分からないことは聞きなさい」と。でも聞いても教えて貰えないんですよね…「やっとくからいいよ!」で…。
③子供との信頼関係が築けなかった
子供が話を聞いてくれない、注意を聞いてくれない、そんな時とことん向き合うことが大切です。しかし、クラス自体にそんな余裕がなく困った場面ではペアの先生が必ず子どもの対応をしていたため、私は子供からの信頼が全くありませんでした。
私は保育補助のような存在でした…
④子供のケガに気づけなかった
毎日辛いと思っていた頃、それは起こりました。
いつも手が痛いと泣く子供がいました。家庭環境が変わって不安定気味で、保育士の気を引きたくて言うのです。そして絆創膏やシールを手に貼ると落ち着きます。
その日もお昼寝前に同じ様に泣いていました。なので、手の甲にシールを貼ると落ち着いて眠りました。
しかし、お昼寝の途中に泣いて起きその場に居合わせた主任が「何かおかしい」と言い、子どもに小さなラムネを「あげる」と渡しました。すると右利きのはずのその子は左手でラムネを取ろうとしました。
主任は右手を差し「こっちの手でどうぞ」というと、その子は右手でラムネを取ろうとした瞬間大泣きしました。
その子は右腕が抜けていたのです・・・。
今までもあったようで、抜けやすい子ではあったようですが腕が抜けているなんてどんなに痛かっただろう。それに気づかず誤魔化しのシールを貼って眠らせたなんて・・・
この日から保育をするのが怖くて仕方がなくなり、今まで以上に行きたくないと思うようになりました。
⑤心と身体が休まる時間がなかった
午睡中に出来ることは、保護者への連絡ノートの記入くらいでした。1年目の保育士はミーティングの準備、お茶やお菓子の準備、その他雑用などを任され常に小走りでした。
保育案の作成も初めてでとにかく時間がかかります。誕生日カードや製作の準備、全て「調べる」ことと「材料を集める」ところから時間がかかってしまいます。その為、帰宅後や休みの日もずっと作業をしていました。
手取りで14万円しかなかったこともストレスの原因だったと思います。
辞める決断
辞めたいとずっと思っていましたが、言い出す勇気が出ず家族や友人にどう思われるのかという心配もあり行動に移せずにいました。しかし、子供のケガに気づけなかった日以来・・・
「いつか本当に大きなケガをさせてしまうんじゃないか」という不安が大きくなり「こんな無責任な人間が子どもの命を預かるなんて絶対に良くない」と思い退職を決断しました。
今考えると「数か月で無責任に仕事を放棄する自分への都合の良い言い訳」だったのだと思います。
保育園に伝えた退職理由
辞めると決めてから次に立ちはだかったのは「退職理由」です。
どうにか自分を正当化できて、引き止めに合わずすぐに退職出来る理由を探しました。
私は表面上は愛想がよくまともに見えた為「1年目は誰でもそう」「1年間は頑張りなさい」と引き止めに合う事は想像に容易かったので、正直に話すという選択肢は除外しました。そこではじめに思いついたのが「体調不良」です。
腰痛や持病が悪化して治療が必要になったということにしてはどうか、と考えたのですが以下の懸念がありやめておくことにしました。
・診断書を求められる
仕事が理由で体調を崩した場合、労災認定されたり失業給付が待機期間なくすぐ給付されます。優しい園長だった場合、こういった配慮のため診断書を提出するように言われることがあります
・演技が必要
退職を願い出るまでの間と、退職日まで体調不良を演じなければなりません
・退職後に目撃される危険性
退職後にプライベートや転職先で目撃された時の気まずさがあります
・退職日を引き延ばされる
体調が悪いとは言え死にそうなわけではありません。となると、後任が決まらなければ「決まるまで」と引き延ばしに合う可能性があると考えました
次に思いついたのが「家族の看病」です。
これは心が痛みましたし「言葉にしたことで、現実に起こってしまったらどうしよう・・・」という迷いがありましたが、他に思いつかず退職理由は「母の看病」にしました。
この頃ちょうど友達のお母さんが膠原病(こうげんびょう)という病気にかかり、友達は祖父母の世話をしたり家事をしたりとお母さんに代って家を切り盛りしていました。
その状態をそっくりそのまま自分のことのように使わせてもらう事にしました。
最低です・・・。すみません・・・。でもあの頃は本当に精神状態がギリギリで、寝ているのか起きているのかも分からないほど、思考回路が停止していたんです…
具体的にはこう伝えました。
母が膠原病という病気にかかりました。
来月から長期の入院が必要となります。うちには高齢の祖母がいて母が介護をしているので、母の代わりに祖母の介護をしたいと思っています。
父は多忙でなかなか母に付き添うことも出来ないので、母の看病もしたいと思っています。
年度途中で本当に申し訳ないのですが、母の入院までに退職させてください。
園長の反応と対応
園長はあまり感じのよい人ではなく「罵られるのでは・・・」と不安がありましたが、回答はこのような内容でした。
そうですか。分かりました。
でも「来月までに」ということは今月中に辞めたいということですよね。
すぐに後任の募集をかけますが、今月中というのは無理かもしれません。
責められることも、引き止められることもありませんでした。
園長先生は、嘘だと分かっていたのだと思います。しかし、詳細なストーリーをつきつけられ、もう何も言う気にならなかったのだと思います。
「責めても止めても無駄だ」と。
退職の流れ
まずはじめに言われたことは「口外するな」ということでした。ペアを組んでいる先輩保育士にも園長から伝えると言われました。
園長に伝えた1週間後、午睡時間に先輩保育士から「園長から聞いた・・・」と驚いた感じで言われました。その1週間後、園長先生から「後任は採用出来ていないが、理由が理由なので今月いっぱいで」と退職の許可を貰いました。
2歳児クラスの担任をしていましたが最後まで「子ども達には言うな」と言われ、出勤最終日早いお迎えの保護者から「先生辞めるの!?」と言われこちらが驚きました。
何故知っているのかと聞くと、玄関に貼りだしてあったと言われ見に行きました。
お知らせ
2歳児○○組担任の○○先生が
7月末日付で退職されます。
と貼りだされていました。
最終出勤日は16時までだったのでその保護者以外挨拶もせずの退職でした。
何か月も悩みましたが、退職の意向を伝えてからはあっさりしたものでした。きっと、私は職場に馴染んでいなかったし、私の退職はそれほど大した事件ではなかったのだと思います。
1年目でしかも年度途中の退職には責任や負い目を感じていましたが、この退職で分かったことは「私が辞めても、それほど大したことではない」ということでした。
退職後
退職後、自分が想像以上にきわどい精神状態だったのだと気づきました。
ゆっくり過ごそうと思っているのに、心がちっとも休まらず時間はたっぷりあるのに熟睡できません。
あまりに眠れず、笑えず、心療内科へかかることにしました。睡眠導入剤や軽い精神安定剤をもらいゆっくり過ごすようにと言われました。
しかし、頑張れなかった自分が恥ずかしくて友達にも会えず「早く新しい仕事を探さなきゃ・・・探さなきゃ・・・」と焦りばかりが募りました。
退職後の心境
退職したことに後悔は全くありませんでした。退職前は「甘え」じゃないかと悩みましたが、甘えではなく精神的に限界だったと改めて思いました。しかし「嫌な仕事を辞められて爽快♪」かと言うと、全くそんな気分ではありませんでした。
「3ヶ月で仕事を辞めた自分」
「年度途中で投げ出した自分」
「嘘をついて辞めた自分」
この思いが自分を責め続けました…
退職後1ヶ月を過ぎると「無職の自分」という焦りも加わりました。勤務期間が1年に満たないのでもちろん失業手当も支給されません。仕事を探さなければなりませんが「また続かなかったら・・・」と思うと怖くて、なかなか一歩を踏み出せませんでした。
1回の転職なら「合わなかった」ですみますが、2回続くと「この子はどこに行っても続かない」と言うレッテルを貼られそうで怖かったのです。
一気に心が軽くなった瞬間
とにかくじっくり探そうと、ひたすら求人情報をチェックしました。
新しい職場探しは期待や希望といった感情とは程遠く「失敗したくない…失敗したくない…」ただそれだけでした。
そんな怯えた状態の私が自分で職場を探すには限界があると思い、転職サイトに登録しました。
担当についてくれた人に「年度途中で辞めてしまったこと」「人間関係に不安があること」「もう失敗したくないこと」を全て話しました。
その時の担当者の言葉で、一気に心が軽くなりました。
○○様のように年度途中で辞めてしまった方でも、多くの方が次の職場で嘘のように楽しく働かれています。
保育士不足は今とても深刻で本当に必要な職業です。保育士を必要としている施設はたくさんあって、新人さんを大切に育ててくれる施設もたくさんあります。
だから、大丈夫です!
人間関係の良さに重点を置いて探しましょう!
- 辛くて辞めるの私だけじゃないんだ
- 年度途中で辞めた人でもいい職場が見つかればちゃんと続けられるんだ
- 一緒に転職先を探してくれる人がいるんだ
こんな安心感から、恥ずかしながら電話で泣いてしまいました。
転職サイトにあまり馴染みがなかったのですが、なんて素晴らしい仕事なんだろうと思いました。誰にも言えなかった情けなさや不安をじっくり聞いてもらえて、それだけでも本当に救われました。眠れなくて通っていた診療内科の薬よりも私には効果的でした。
しんぷる保育は関東に特化しているので、関東以外で探している人は全国の求人を扱っている保育士人材バンクが良いです。スタッフもしんぷる保育と同じかそれ以上に優しくて親切です。
保育園への再就職
しんぷる保育に登録して、担当者さんに求人を探してもらいました。
心と身体を回復させたかったので「勤務開始は来月以降で」とお願いしました。
それから担当者さんは週に1度電話をくれて私の体調や心境に変化がないかを確認してくれ、合いそうな求人を紹介してくれました。その中で担当者さんが一番おすすめという保育園の面接を受ける事にしました。
面接
面接の日程調整はしんぷる保育の担当者さんが行ってくれたので、面接に行くまで施設と直接のやりとりはありませんでした。(全国対応している保育士人材バンクも同じようにやり取りを代行してくれます)
面接で保育園に行った際、前職の保育園との明らかな違いを感じました。
すれ違う先生の穏やかな顔、優しい挨拶、園長先生の話しやすさ、保育園の空気自体が私の知っているものとは違いました。
その瞬間に「あの保育園が辛かったのは私の甘えじゃない」と思えました。退職理由や勤務期間の短さは全て正直に話しました。というより、保育士人材バンクの担当者さんが事前に伝えてくれていました。
前職についてあまり触れられることはなく、園長先生はひとこと「大変だったのね。子どもは可愛いわよ。」と微笑まれました。
ここでも不覚に涙が溢れました・・・。
採用・勤務開始
有難いことに採用してもらえ、退職から3か月後再就職を果たしました。産休保育士の代わりとして0歳児の担当になりました。
まず驚いたのは保護者と保育士の関係の良さでした。保護者がとても保育士を慕っていて、毎日どこかで保護者が保育士に育児相談をしていました。保育士はそれを友達の話を聞くかのように、興味を持って聞いていました。
これは、私に対してもそうでした。
「保育のいろは」を0からきちんと教えてくれましたが「指導」という感じではなく、子どもに何かを教える時と同じように、私がどうすれば出来るようなるのかを考えてくれていたように感じました。
上手くいかず落ち込むこともありましたし、忙しくてしんどいと思うこともありましたが「辞めたい」と思ったことは一度もありませんでした。
いつも見守ってくれる先輩や園長先生がいて、何かあれば必ず誰かが気にかけてくれます。
あらを探すのではなく、いいところを褒めてくれます。上手くいかないことはどうすればよかったのか一緒に考えてくれるんです…
そんな先輩を見て「どんな保育士になりたいか」という具体的な目標を持つことも出来ました。
「もう保育園では働きたくない」という人もいると思います。そんな場合は「保育園以外」で保育士資格を活かせる仕事を探してみるのもおすすめです。
新卒1年目で保育士を辞めて
1年足らずで辞めることは、誰もが「甘えなのではないか」と自問自答することだと思います。
私もそうでした。そして、辞めたからといってすがすがしい気持ちになれるかと言うと残念ながらそうではありませんでした。
「甘え」が許せない自分に厳しい性格の人は、頑張ることでしか楽にはなれないのではないでしょうか。
「辞めるかどうか」を考えるのではなく「ここで頑張る」意味があるのか、「新しい環境で頑張る」のが最善なのかを考えてみてください。
頑張り屋のあなたがこの記事を最後まで読むほど悩んでいるということは、今の職場はあなたに合っていない証拠だと思います。
「保育士」という仕事を嫌いになる前に、あなたに合った職場を見つけてください。
あなたが職場を変えようと決断したなら、ぜひ以下の事を実践してください。
- 写真に惑わされない
∟写真は一瞬の切り取りです。事実とは限りません - 文字を信じない
∟「和気あいあい」「のんびり」形のないものはなんとでも言えます - 実際に見に行く
∟どんな情報より、自分で見た方が正確です。転職サイトを利用すれば見学させてもらえることもあります。 - 周りの声を集める
∟転職サイトの担当者、ネットの口コミなど、客観的な情報を集めましょう - 不安要素があればやめておく
∟少しでも気になることがあれば、やめる勇気を持ちましょう。小さな不安は多きな後悔へとつながります。
保育士人材バンク(全国対応)やしんぷる保育(関東特化)のような転職サイトは今の職場が辛い人の相談にも乗ってくれます。
転職するかしないかは相談してゆっくり考えるといいと思います。
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