保育士で残業代をきちんともらっている人はどのくらいいるのでしょうか?そもそも残業なしで働くことはできないのでしょうか。
私も含めサービス残業に嫌気がさして「もう辞めたい」と思ったことがある保育士はとても多いと思います。
そこでこの記事ではどうして保育士の残業は「サービス残業」が当たり前なのか解説したいと思います。
サービス残業とは?
サービス残業という言葉をよく聞きますが、そもそも残業とは本来どうあるべきものなのか知っていますか?
時間外労働
残業の正式名称は「時間外労働」です。この時間外労働はその分の手当てを払えばどれだけしても(させても)良いものではなく、労働基準法で上限が定められています。
労働時間の原則は1日8時間、1週40時間までです。
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
基本的に月45時間年360時間以内しか時間外労働をしてはいけないと定められています。
この時間内かつ、きちんと残業手当を支払う必要があります。残業手当の額にも規定があります。
出典:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501860.pdf
通常の賃金に25%を上乗せした額を支払う必要があります。
サービス残業
通常の時間外労働(残業)について解説しましたが、この時間外労働に対して賃金が支払われない業務が一般的にサービス残業と呼ばれています。
ただし、本人はサービス残業をしていると思っていても「月〇〇時間までの残業は給与に含む」という雇用契約になっていることもあります。(みなし残業)
この場合は労働基準法上はサービス残業となりません。
サービス残業パターン①
みなし労働やその他の雇用契約によって「残業をしても給料が変わらない」というパターンがあります。低い給与の中に数十時間分の残業手当がすでに入っているということです。
このパターンの場合は残業した場合タイムカードもきちんと押すので残業時間の把握はされています。なので時間外労働の上限を超えないように指導されることがあります。
タチの悪い職場だと時間外労働の上限を超えそうな場合はタイムカードを押さないように指導されたり持ち帰りを黙認されることもあります。
サービス残業パターン②
残業自体を認めておらず通常の勤務が終わるとタイムカードを押させ、そのあとに残業を強いられます。明日の保育の準備や職員会議であっても残業と認めない劣悪な職場も存在します。
このパターンの怖いところはそもそも残業自体を認めておらず通常勤務が終わるとタイムカードを押させるので、残業時間の把握さえされていないことです。
このパターンの職場は本当に最悪です。残業は当たり前。そういうもの。と思い込ませ労働力を搾取していきます。
保育士のサービス残業が当たり前な理由
保育士のサービス残業が当たり前のように行われていることには保育士の仕事内容やこれまでの保育業界の体質が大きく関わっています。
「勤務時間=保育時間」っていうのにそもそも無理がありますよね。保育士の仕事は保育以外のことが多いのにそのことが考慮されていないなんて…
保育以外の仕事
書き物
保育士の仕事は書き物がとても多いですよね。毎日のお帳面や振り返り、週単位、月単位、年単位、園児単位での書き物が山ほどあります。保育中にこれをこなす時間などなく、午睡中も何かとやることがある為勤務時間外にするしかありません。
保育準備
設定保育の準備や製作の下準備など毎日保育準備が必要です。ちょっとした切り貼りなら保育の合間にすることもできますが、毎日保育時間中に終わらせることは難しいのが現状です。
会議
午睡中や子どもが少ない時間は書き物や保育準備を進める貴重な時間ですが、この時間に会議が行われることが多い為、結果的に作業時間が削られ自分の仕事は勤務時間外にすることになります。
サービス残業の理由
仕事内容が多くどうしても勤務時間外に仕事をする必要があったとしてもどうしてそれが「サービス」となってしまうのでしょうか。
して当たり前の雰囲気・暗黙の了解
これはとても多いのではないでしょうか。一般企業に比べ保育現場は閉鎖的でコンプライアンスへの意識が低いところが多いのも理由のひとつです。昔からの体質が改善されていないのです。
- ずっとそうだから
- みんなそうだから
- そんなもの
ひどい職場だと「先輩が残っている」という理由で帰れないところもあります。
これに耐えられなくなったり限界を感じて保育士を辞めてしまったり転職するんですよね…
個人の能力を考慮していないから
要領が良かったり保育士としての経験が長いと短時間で保育準備や書き物を終わらせられる人もいます。また後輩が保育をしている時間を自由に使ったり。なので残業せずとも業務をこなせてしまうこともあります。
しかし、経験の浅い新人や要領の悪い保育士の場合そうはいきません。そういった「できる人」を基準にしてしまうとできない人は個人の責任になってしまうので「サービス」で残業をするしかなくなってしまうのです。
人件費削減
残業を認めると経費が掛かります。本当に予算がない職場もあれば経営者が私腹を肥やす為に人件費を切り詰めているところもあります。こういったところは職員の人数もギリギリであったり、さらにサービス残業が必要となる要因をはらんでいます。
私が昔働いた家族経営の保育園は園長一家が私腹を肥やすのに必死で、人件費はもちろん保育に関わるお金も削りまくっていて最悪でした…
働き方改革の悪影響
2019年に働き方改革の一部が施行されました。働き方改革の中には「長時間労働の解消」という項目があり時間外労働の上限が設定されました。本当に上限までの時間外労働しかなくなったのならいいですが、ただ申告する時間だけを短くするという職場も多く存在します。
上限以上の労働は禁止なので残業はなかったことにされ、結果「サービス残業」になってしまうんですよね…
残業はやる気のバロメーター
これは本当に馬鹿げているのですが「残業しているとやる気がある」「残業しないとやる気がない」と思われてしまう謎のシステムです。遅くまで残って仕事をしていると「頑張っている」なんて本当におかしなことです。
でもこれは多くの職場で見られる現象です…
当たり前のサービス残業が嫌で辞めたくなったら
頑張って働いても残業代も出ず、そもそもの給与も低い。「子どもは好きだけど保育士を続けたいと思えない」「いつかは辞める」と思いながら働いている人は多いですよね。
確かに保育職は給料が安く待遇が悪いところも多いですが今は待遇や環境をきちんと整えている職場もたくさんありますよ!
残業代は本来支払われて当然なので、本当に支払われるかどうかを文面で確認するのは難しいのですが「全額支給」と書かれている場合は本当に支払われる可能性が高いので判断基準のひとつにしてください。
残業代をきちんと支払う職場はその他の福利厚生も充実している場合が多く、住宅補助があったり年間休日が120日以上あるところが多いのが特徴です。
保育士の仕事自体が嫌で辞めたいなら仕方ありませんが、職場の環境や給与面で嫌気がさしているなら転職も視野に考えてみてくださいね。
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